08 マクロファージは免疫系のスパークプラグ

ウイルスという病原体を撃退するには第2部隊の活躍を待たねばならない。

その活躍に欠かせないのが、マクロファージとT細胞の分化である。

まず、マクロファージのはたらきからみていこう。

もともとマクロファージの意味は「大食い」で、 白血球のなかの単球(骨髄でできた単核細胞でアメーバみたいである)が成長したものである。

マクロファージの役割は、バクテリア、カビ、原虫などを狙って「食べる」ことである。

ここで「食べる」の実際の意味は、「飲み込む」または「取り込む」ことである。

マクロファージは粘着性があり、偽足を出してアメーバのようにのろのろと運動している。

このように、マクロファージの活動はいかにも原始的である。

また、マクロファージは外部からの侵人者を「食べる」だけではなく、 老廃した赤血球、損傷した細胞、過剰なコレステロールなど血液のなかのあらゆる種類の不要になった物質を飲み込んで消化している。

すなわち、マクロファージは細胞の内部にたくさんの分解酵素を持っていて、これらの酵素を用いて取り込んだ物質をバラバラに分解する。

マクロファージは、組織のなかの「掃除屋」の役割も果たしている。

だが、マクロファージの晟大の役割は、敵を飲み込み、食べたあとに、 敵の残骸をマクロファージ細胞の表面に掲げることである。

たとえば、マクロファージがSARSウイルスを飲み込んで分解して断片にする。

この断片はSARSウイルスのものである。

これをマクロファージは細胞表面に示すのである。

このように敵の残骸を自分の細胞の表面に掲げることによって、 ヘルパーT細胞に敵が侵入したこと、つまり体内に抗原が存在していることを明示する。

このようなマクロファージの活躍によって、ヘルパーT細胞を中心とした免疫系の第2部隊がはたらき始める。

もしマクロファージがはたらかなかったら、ヘルパーT細胞は敵が人体に侵入したことを確認できない。

ヘルパーT細胞が「敵が侵入してきた」ことに気づかなければ、 抗体をつくるB細胞も、敵を殺すキラーT細胞もはたらかない。

つまり、マクロファージがきちんと役割を果たさなければ、免疫系が機能を始めることすらないのである。

免疫系の開始を担っているマクロファージは、自動車のスパークプラグに相当する。

これがなくては自動車は走らない。

また、マクロファージは、ヘルパーT細胞が放出するインターロイキンという物質を受け取って元気になり、 敵を効果的に殺す能力を獲得する。

以上のことから、マクロファージには3つの機能があることがわかる。

1つめは、敵を取り込むこと。

2つめは、取り込んだ敵をバラバラに分解して、細胞の表面に提示し、 ヘルパーT細胞に細胞内に敵が侵入したことを知らせること。

3つめは、ヘルパーT細胞から刺激を受けて活性化し、よりいっそう敵を取り込んで分解することである。

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