免疫と自然治癒力についてやさしく解説いたします。

06 免疫系は人体を守る軍隊である②

3章 免疫系が人体を守る

06② 免疫系は人体を守る軍隊である②

第1部隊のメンバーのはたらきをみていこう。

体をおおう皮膚は、外敵である微生物が体内に入るのを妨げている、いわば外壁のような存在だ。

皮膚から放出される汗は、その酸性によって多くのバクテリアを殺す。

目は涙腺から涙を出して微生物を洗い流す。

□から出る唾液には、バクテリアを分解するリゾチームという酵素がふくまれている。

鼻毛は、体内に侵入しようとする微生物やほこりを捕らえる。

くしゃみは、敵を体外に吹き飛ばしている。

呼吸器にある細い毛は、微生物を引っかける。

のど、気孔、気管から分泌される液体(粘液)は、粘着力で微生物を捕らえる。

胃から放出される胃液には塩酸という非常に強い酸がふくまれている。

このため、ほとんどの微生物は胃で死滅する。

この条件で生きて暮らせることが知られているのは、ヘリコバクターピロリという胃炎を発生させるバクテリアだけである。

また、腸には100兆個を超えるバクテリアが住んでいる。

すなわち、ビフィズス菌やアシドフィルス菌といった乳酸菌や、納豆菌、大腸菌などが共生しているから、 悪玉菌がここに住みついて勢力を拡大するのは困難である。

腔や尿道は粘液が守っているから、ここからも敵は容易には体内に侵入できない。

皮膚による守りはとても堅固である。

だが、鉄壁と思われる守りも、ときには思わぬことから破られてしまうことがある。

たとえば、古い木の破片をつかもうとしたら、運の悪いことに、木についていたトゲが手に刺さることもある。

忘れてはならない炎症のはたらき

次の防衛網として敵を迎え撃つのは、炎症である。

トゲが手に刺さることで傷ができたところから話を始めよう。

傷口の細胞は、炎症を発生させるヒスタミンという物質を放出する。

炎症は、皮膚が赤くなり、痛み、腫れ、発熱をもともなう不快な症状である。

不快な症状なら抑えてしまえばいいのかというと、事はそう単純ではない。

この不快な炎症が、体を病気から守るのに重要な役割を担っているからだ。

痛みは、危険が人体を襲ってきたこと、すばやく臨戦体制を築かねばならないことを脳に知らせる信号である。

そして発熱は、リンパ球の増殖を促進し、マクロファージのはたらきを強めている。

では、腫れは役立っているのか。

トゲが皮膚を破って突き刺さったとしよう。

これによって、血管が広がるか、または破れる。

血管が広がれば、その分だけ組織は広がるし、血管が破れれば、血管から血液が組織へと流れるので、これまた組織がふくらむ。

いずれにしてもトゲが皮膚に刺さったら、必ず組織がふくらむ。

これが腫れという現象である。

組織が腫れることによって、空間に余裕ができた分だけ、 免疫系ではたらく好中球とマクロファージといった食細胞が敵の侵入しようとする傷□に集まりやすくなる。

食細胞が活性酸素で敵を撃退する

炎症のサイレンを聞いて「敵が侵入した」ことを知った食細胞は、一目散に炎症の発生した場所にかけつけ、敵を飲み込んでしまう。

この様子は、「食べる]ことに似ているから「食作用」という。

食細胞の食作用には、接着、飲み込み、消化の3つのステップがある。

食細胞が炎症の起こった箇所に到着してみると、敵がいた。そこで、食細胞は敵にくっつく。

これを接着という。

接着のあとに、食細胞の膜がへこみ陥没していく。

そして陥没のなかに敵を包んで飲み込んでしまう。

これが飲み込みである。

食細胞が敵を飲み込んだあとに、細胎内の小器官リソソームが敵をめがけて活性酸素を発射する。

活性酸素とは、酸素からできた猛毒で、敵をこっぱみじんに破壊してしまう。

これが消化である。

食細胎内の活性酸素には、週酸化水素、ヒドロキシラジカル、次亜塩素酸がある。

活性酸素はどれくらい強力な毒なのか。

たとえば、活性酸素の1つである次亜塩素酸は、 洗濯物にこびりついた頑固な汚れを酸化分解してきれいに洗い落とす漂白剤として用いられているほどの威力を持っている。

バクテリアによる感染に対しては、食細胞の活躍によって人体を防衛することができる。

だが、感染したウイルスを退治するには、食細胞だけでは不十分である。

そこで第2部隊である獲得免疫が出動することになる。


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