免疫と自然治癒力についてやさしく解説いたします。

08 ストレスによってホルモン濃度が変わる

4章 ストレスと自然治癒力の関係

08 ストレスによってホルモン濃度が変わる

その頻度によって変化の度合いに影響が出る

ストレスを受けたときにヒトの内分泌系はどう変化するのか。

この疑問に答えるために、ノルウェーの神経生理学者ホルガー・アルシンは、 バラシュート降下の訓練を受け始めてまもない段階のノルウェー軍の新兵を対象に、彼らの血液中のホルモン濃度の変化を調べることにした。

この訓練で新兵はワイヤーに接続する金具が取り付けられている特別のユニフォームを着用し、 12mの塔から吊り下げられた長いワイヤーに沿ってコースを降下した。

この訓練で新兵は、空中からの自由落下によく似た感触を経験するから、 命を落とす可能性は低いと知りながらも、初めのうちはかなり心配していた。

アルシンは、毎回の飛び下りの前後に彼らの血液を抜き取ってホルモン濃度を測定した。

その結束はこうだ。

血液IOOミリリットル中のコルチゾールレベルは、飛行前には6マイクログラム(マイクログラム=100万分の1グラム)であったが、 初飛行の直後には13マイクログラムにハネ上がった。

だが、2回目の飛行後では8マイクログラムへと急激に減少し、3回目では6マイクログラムと平常にもどった。

血液IOOミリリットル中のノルアドレナリンレベルは、飛行前には20マイクログラムであったが、 初飛行の直後には38マイクログラムに増えた。

だが、2回目の飛行では30マイクログラムに減少した。

血液100ミリリットル中のテストステロンレベルは、飛行前には6.5マイクログラムであったが、 初飛行の直後には3マイクログラムこ減少。

だが、2回目の飛行では6.6マイクログラムに回復した。

ストレスに対処するために、ノルアドレナリンとコルチゾールが血液中で急激に増えたが、逆に、テストステロンは減少した。

性欲を高めるテストステロンは、生きるか死ぬかという危機的な状況では不要であることが、減少の理由である。

2回目の飛行からは、ノルアドレナリンとコルチゾールレベルは低下したが、逆に、テストステロンレベルが上昇して、 どのホルモンもほば平常値にもどった。

このことから、同じストレスに繰り返しさらされると、慣れてきてもはやストレスと感じないことがわかる。

通勤によってノルアドレナリンレベルが上昇する。

パラシュート降下訓練ほど劇的なストレスではないが、毎日の通勤もかなりのものだ。

スウェーデンにあるカロリンスカ研究所のマリアン・フランケンハウザーは、 通勤電車を利用する乗客の血液中のノルアドレナリンレベルを測定した。

それによると、乗客のノルアドレナリンレベルは、電車に乗らないときよりも23%上昇した。

さらに、通常の混雑より乗客数が10%増えた電車の乗客のノルアドレナリンレベルは65%も上昇した。

また、乗客のノルアドレナリンレベルは、電車に乗っている時間が長いほど、そして電車内が混雑しているほど高いことも確認された。

都心部では毎朝の通勤ラツシュがすさまじい。

満員電車に1時間も乗っての通勤はザラであるから、電車通勤者は、毎日かなりのストレスにさらされていることになる。

ストレスで発生する「エコノミークラス症候群」

電車通勤よりもさらに大きなストレスとなるのが、飛行機を利用しての長距離の移動である。

飛行機から降りると疲れを強く感じる。

狭い場所で同じ姿勢で長時間座っているのは苦痛である。

そのうえ、血液の循環の悪化とストレスによって血液が凝固する血栓が起こりやすくなる。

飛行機の乗客が、席を立った直後に呼吸困難に陥って倒れることがある。

これが「深部血栓症」である。

大手電機会社に勤務する淳子(仮名、55歳)は、海外の会社と共同で新しい事業を立ち上げるために、 11時間の飛行でアムステルダムから成田に到着したとたんに、顔面蒼白になって倒れた。

そばにいた客室乗務員がただちに彼女をイスに座らせるやいなや、彼女は気を失い、けいれんを始めた。

成田空港から救急車で病院に運び込まれた彼女は、深部血栓症と診断された。

幸い、彼女は、治療を受けて3週間後に退院した。

だが退院から8か月たっても彼女は、血栓溶解剤を毎日飲み続けている。

深部血栓症は挟い座席に長く座っていると発生しやすい症状で、「エコノミークラス症候群」とも呼ばれている。

誤解を招く名前であるが、ビジネスクラスの利用客も安心はできない。

実に、この被害にあった彼女もビジネスクラスを利用していたのである。

航空医学研究センターは、2000年までの8年間に国内で44人に深部血栓症が発生し、うち4人が死亡したと報告している。

発症者の平均年齢は61歳。

性別では、男性4人、女性40人。

飛行時間は8~13時間。

発症した人の特徴は、飛行開始から到着まで一度も席を立たなかったことである。

とりわけ、通路側でない席に座った女性はトイレに行くのを我慢して席を立だない傾向がある。

このことが女性の発症者が男性よりも圧倒的に多い理由と考えられる。

飛行機に長時間乗る際は、背伸びなどで血流をよくするよう心がけたい。






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