免疫と自然治癒力についてやさしく解説いたします。

10 ストレスは免疫力を低下させる

4章 ストレスと自然治癒力の関係

10 ストレスは免疫力を低下させる

結核患者の症状が気分しだいで変わる

今では、ストレスが免疫力を低下させることは自明になっているが、これが理解されるまでには、かなりの時間がかかった。

そのきっかけは、結核患者の予後の観察と宇宙飛行士のリンパ球の数の変化である。

まずは結核患者の例からみていこう。

結核は、明治の後半から大正や昭和の初期にかけて猛威をふるい、多くの死者を出した「死の病」である。

肺結核患者の治療をしていた医師石神享は、患者の症状が予期していたよりも悪化したり、 思ったより悪化しないことがあることに気づいていた。

患者の「心の持ち方」が感染症の予後に強く影響するというのは、石神にとってわが目を疑う事実であったはすだ。

というのは、結核は、細長い棒のような格好をした結核菌というバクテリアが引き起こす感染症であるからだ。

精神神経免疫学がまだ誕生していなかった当時、この現象を科学で説明することはできなかった。

しかし現代の生命科学の知識を用いれば、この不可解にみえた現象は次のように理解できる。

希望を持つ人は、脳が活性化し、交感神経と副交感神経のバランスがとれ、三位一体が整い、 強化された免疫系が結核菌を撃退したのである。

対照的に、落胆や失望は強力なストレスとなって脳を直撃し、交感神経と副交感神経のバランスが崩れる。

三位一体がゆがんでしまい、免疫系が弱体化する。

こうして、結核菌が増殖して予後が悪化する。

心の持ち方が免疫系の強弱に強く関係している例を次に示そう。

NASA(アメリカ航空宇宙局)の医療研究チームによって調査された、宇宙飛行士のリンパ球の変化をみていこう。

これは、「心の持ち方」が免疫系の強弱に強く関係することを、データに基づいて発表した最初の研究である。

1972年、NASAのクレイグ・フィッシャーは、宇宙飛行士のリンパ球の数の変化を調べたところ、 フライト前と帰還した当日は、飛行士のリンパ球数は減少していたが、帰還してから1日たつとかなり増加していた。

このことから、肉体的・精神的に厳しく鍛え抜かれた宇宙飛行士であっても、 宇宙飛行という未知の空間への旅では、大きなストレスとなり、免疫系が強く抑制されていることが判明した。

その後、宇宙飛行士のリンパ球の変化は、さらに詳しく調べられ、もっともストレスの高い大気圏再突入のときだけ、 白血球数や好中球の割合が増えることがわかった。

生命を脅かすほど強いストレスから身を守るために、免疫力が一時的に強まることがあるのは合理的である。

また、免疫力の強さは、リンパ球の数ばかりでなく、 抗原と反応したリンパ球がどれだけ分裂・増殖するかによっても見積もることができる。

これをリンパ球幼弱化反応という。

宇宙飛行士のリンパ球は、彼らが地球にもどってからの3日間というもの、分裂・増殖する能力が低下していた。

リンパ球幼弱化反応の低下から、この間、宇宙飛行士の免疫力が弱まっていたことがわかる。






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